この記事は上記の総括記事を補うための個別記事です。
三体シリーズはここ最近で一番はまった小説なのですが、ストーリーが壮大で、読んでいる途中で迷子になってしまうこともあったので、いったん情報を整理したくて、この記事を書きました。
三体シリーズの全体は上記の総括記事を、第2部『黒暗森林(The Dark Foresrt)』の詳細は本記事をご覧ください。
これらの記事がこれから三体(第2部『黒暗森林』)を読む人、読んだけどおさらいしたい人のお役に立てば幸いです。
この記事を書いた人
日本生まれ日本育ちの日本人。外資系歴10年以上、TOEICは対策なしで915(2019年)。英語学習や外資系での経験を、発信・共有しています(詳細プロフィールはこちら▶︎)。
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黒暗森林(The Dark Forest)のあらすじ
この宇宙は無数の肉食動物が生息している森林のようなもの。他者の存在は自身の生存への脅威で、自文明の居場所を明らかにすることは他文明に餌のありかをさらすこと。地球文明はその存在を明かしてしまい、三体文明に狙われることとなる。
三体文明の艦隊群は過酷な環境の故郷を捨て、地球を目指して旅立った。三体文明は極小のAI智子(Sophon)を遠隔操作することで地球の科学の発展を妨害するとともに、全人類のコミュニケーションを傍受、地球の動きは筒抜け。しかし智子(Sophon)は、人間個人の頭の中で何が考えられているかは分からない。
そこで地球文明は4人の面壁者(Wallfacer)を任命。地球の予算をほぼ自由に使える絶対的な権限を移譲された各人が、自分の頭の中だけで秘密の対策を考える。これに対し、三体文明はそれぞれに対応した破壁者(Wallbraker)を当てがい、地球文明の企みを暴こうとする。
4人の面壁者(Wallfacer)のうち3人は、元アメリカ国防長官、元ベネズエラ大統領、元EU委員長と、適任とも言える人選だったが、4人目は逻辑(Luo Ji)という一般人(宇宙学者)。なぜか三体文明は地球人の中で逻辑(Luo Ji)を最も恐れており、逻辑(Luo Ji)を殺そうとしてくる。逻辑(Luo Ji)には何かがあるに違いない、ということで地球軍は逻辑(Luo Ji)を面壁者(Wallfacer)に選ぶ。三体文明はなぜ逻辑(Luo Ji)を恐れるのか?
逻辑(Luo Ji)自身もその理由は分からない。いわば、逻辑(Luo Ji)にとっての破壁者(Wallbraker)は自分自身。逻辑(Luo Ji)は壁を破り、三体文明が逻辑(Luo Ji)を恐れる理由に気づくことができるのか?
黒暗森林(The Dark Forest)の状況を整理
危機紀元(Crisis Era)の前半
第2部は危機紀元(Crisis Era)に舞台を移す〔第1部は共通紀元(Common Era)〕。
危機紀元(Crisis Era)の前半は、Wallfacer(面壁者)の時代で、未来は地獄という世界観。
三体文明の襲来に備える→緊縮財政→世界経済が縮小という流れで、暗黒時代となる〔=大峡谷(the Great Ravine)〕。
地球三体協会(the Earth-Trisolaris Organization = ETO)
救済派(the Redemptionists)は崩壊し、生存派(the Survivors)は分離し別の組織になり、降臨派(the Adventists)だけが残っている。
国連惑星防衛理事会(Planetary Defense Council = PDC)
国連組織の一部で、三体文明への対策を議論する理事会。面壁者(Wallfacer)の任命、予算の管理などをする。
逻辑(Luo Ji)に真面目に面壁者(Wallfacer)をやらせるため、妻子を誘拐、冬眠させる。
酷い人権侵害行為だけど、論理的な行為ではある(是非はさておき)。ちなみに、逻辑(Luo Ji)は中国語で「論理=Logic」の意味。
逃亡主義と(Escapism)と敗北主義(Defeatism)
逃亡主義と(Escapism):人類の一部が乗る宇宙船を作り、逃げ、地球文明の絶滅を避けようとする主義。
敗北主義(Defeatism):三体文明には勝てないと諦める主義。
危機紀元(Crisis Era)の後半
危機紀元(Crisis Era)の後半は一転、科学技術が発展し楽勝ムードが漂う。
人類は三体文明への勝利を確信し、未来は楽園という世界観に変わる。
地球文明は2つに分割
- 地球インターナショナル(Earth International):今までの地球を引き継いだ世界。
- 艦隊インターナショナル(Fleet International):どこの国にも属さず、政治的、経済的に独立している。国連のメンバー。3つの艦隊〔アジア艦隊(the Asian Fleet)、欧州艦隊(the European Fleet)、北米艦隊(the North American Fleet)〕から成る。
太陽系艦隊連合会議(Solar Fleet Joint Conference = SFJC)
国連惑星防衛理事会(PDC)が進化したもの。しかし実際の権力はなく、各艦隊のトップが実権を握っている。
黒暗森林(The Dark Forest)の登場人物
メインの登場人物
- 逻辑(Luo Ji):天文学者、社会学者、大学教授。三体文明が唯一恐れる地球人。今日を生きているただの個人で、人類文明の存続はどうでもいいと思っている。
- 葉文潔(Ye Wenjie):宇宙学者。元地球三体協会(the Earth-Trisolaris Organization = ETO)のトップ。逻辑(Luo Ji)に宇宙社会学の公理を授ける。
- マイク・エヴァンス(Mike Evans):ETOのリーダー。逻辑(Luo Ji)の危険性に気づいている。第2部では既に死亡。
- 章北海(Zhang Beihai):人民解放軍海軍の政治委員からSpace Force Officerに移動。大多数の地球人が敗北主義(Defeatism)になる中で、人類の勝利を信じている。
- 常偉思(Chang Weisi):人民解放軍の将軍からSpace Force 司令官に移動、章北海(Zhang Beihai)がなぜ前向きなのか理解できない。
- 史強(Shi Qiang):PDCセキュリティー部門の警官。
- 庄顔(Zhuang Yan):逻辑(Luo Ji)の理想の女性。中国美術を専攻し、大学を卒業したばかりの学生。黄昏を描くのが好き。逻辑(Luo Ji)からは「自分を幸せにすること、地球で一番幸せな女性になることが仕事」と言われる。

重要な登場人物① 逻辑(Luo Ji)の補足情報
- 「Carpe diem(ラテン語で「今を楽しめ」)」が人類の最も神聖な義務だと思っている。
- 面壁者(Wallfacer)に任命されたことに納得がいかない。
- 三体文明は生存しようとしているだけで、それ自体に善悪はないと考えている。
- 妄想癖が激しく、理想の女性を想像して付き合っている気になる。
- 女性はfirelilghtに照らされたときが最も美しいと思っている。
- 逻辑(Luo Ji)が小説を書くシーンがあるので、作者の劉慈欣さんが自分自身をを重ねているキャラ?
重要な登場人物② 章北海(Zhang Beihai)の補足情報
- 精神印章(Mental Seal)が始まる前に冬眠に入った宇宙軍将校。
- 常日頃から地球文明は三体文明に勝てると信じている。
- 敗北主義(Defeatism)の精神印章(Mental Seal)がされていないことを理由に、人類最強の戦艦である自然選択(Natural Selection)の艦長となる。
- しかし本当は逃亡主義(Escapism)であり、人類を存続させるため、自然選択(Natural Selection)をハイジャックして宇宙に逃亡する。
4人の面壁者(Wallfacer)
面壁者(Wallfacer)とは? → 少林寺の創始者が10年間、岩壁の前で瞑想したら岩壁に影が刻まれた、というエピソードに、1人で孤独に考えることを重ねていると思われます。
1. フレデリック・タイラー(Frederick Tyler)
- 元米国国防長官。
- 作戦 = 蚊群特攻:水素爆弾を積んだ無数の飛行部隊を作り神風アタックするプラン(真の狙いはネタバレになるので割愛)。
2. マニュエル・レイ・ディアス(Manuel Rey Diaz)
- 元ベネズエラ大統領。
- 作戦 = 水星からの水爆攻撃:水星に少なくとも100万発の水爆を用意して攻撃するプラン(真の狙いはネタバレになるので割愛)。
3. ビル・ハインズ(Bill Hines)
- イギリスの脳科学者で、元EU委員長。
- 作戦 = 人間の脳を拡張させることで、科学技術を発展させようとするが、途中で偶然発見した精神印章(Mental Seal)という洗脳技術を使うことに(真の狙いはネタバレになるので割愛)。
4. 逻辑(Luo Ji)
- 三体文明が唯一恐れる地球人。
- 作戦 = 特になし。理想の女性(a dream lover)を見つけ、皇帝のような隠居生活を楽しむ。
- 葉文潔(Ye Wenjie)に宇宙社会学の公理(※)を授けられている〔これが三体星人が逻辑(Luo Ji)を恐れる理由〕
- 最初はやる気がなかったけれど、やがて呪文を思いつき宇宙に発射。すると狙った星が消滅し(=他の文明に攻撃された)、黒暗森林理論(※)に確信を持つ。
※:クリティカルなネタバレになるので、ここでの説明は割愛します。
上記4人の面壁者(Wallfacer)にそれぞれ破壁者(Wallbreaker)が付くことになりますが、逻辑(Luo Ji)だけは例外です。
その理由は、逻辑(Luo Ji)自身もまだ、三体星人が逻辑(Luo Ji)を恐れる理由に気づいていないからです。
この状態はいわば、逻辑(Luo Ji)自身が破壁者(Wallbreaker)のようなもの。逻辑(Luo Ji)は三体星人が逻辑(Luo Ji)を恐れる理由に気づくことができるのか?
黒暗森林(The Dark Forest)のその他のポイント
終末決戦(the Doomsday Battle)
本来の意味は、三体文明の艦隊が地球に到着して、地球軍との直接対決になる日のことを想定した言葉のはずだけど、実際は水滴(the Droplet)の攻撃を受けた日や、逻辑(Luo Ji)が黒暗森林理論(the Dark Forest Theory)で地球を守った日までの期間のことを指している?この辺の定義がしっかりされていないように思いました。
以下、地球軍が三体文明の探索機である水滴(the Droplet)と戦った日を、終末決戦(the Doomsday Battle)として整理します。
- 地球軍:アジア、ヨーロッパ、北米の三大艦隊からなる2000隻の戦艦。
- 三体軍:水滴(the Droplet)という探索機1機。聖母の涙のよう。表面はどんなに拡大しても粗が見えない完璧に滑らかなミラー。涙が出るほど美しい。
- 結果:20分以内に地球軍はほぼ全滅。青銅時代(Bronze Age)と量子(Quantum)の2隻だけが辛くも逃げ切る。

地球軍の宇宙戦艦の行方
第2部『黒暗森林』では何隻も宇宙戦艦が登場するので、初読時は混乱すると思います。そこで、重要な戦艦に絞って以下に整理しました。
- 自然選択(Natural Selection):地球軍最強の戦艦。水滴(the Droplet)が来る前に章北海(Zhang Beihai)がハイジャックして地球から逃亡する。
- 地球軍は自然選択(Natural Selection)を追跡するために次の4隻を派遣する:藍色空間(Blue Space)、企業(Enterprise)、深空(Deep Space)、究極の法則(Ultimate Law)
- 水滴(the Droplet)との終末決戦(the Doomsday Battle)を辛くも逃げ延びたのは次の2隻:青銅時代(Bronze Age)、量子(Quantum)
- 5隻と2隻の2グループは太陽系のほぼ逆方向に進んでいる。
- 最終的に、Blue Space(藍色空間)は他の4隻を、Bronze Age(青銅時代)は量子(Quantum)を滅ぼして生存。地球からは非難轟々となる。
逻辑(Luo Ji)と庄颜(Zhuang Yan)の名前の意味
逻辑(Luo Ji)とそのパートナー庄颜(Zhuang Yan)の2人だけ、名前の意味が説明されている点に注目してみました。中国語で逻辑はlogic、颜はcolorという意味。作者の刘慈欣さんはこの2人だけ特別扱い=何らかの役割を与えてるように感じたためです。
結論、逻辑(Luo Ji)は公理(axiom)の意味が一番大きいのかなと思いました。その理由はlogicとaxiomには似た意味があるし、逻辑(logic)と宇宙社会学の公理(axiom)から黒暗森林理論を導き地球を救ったからです。
一方、パートナーの颜(color)から逆算すると、逻辑(logic)にはcolorlessっていう意味もあるのかもしれません。というのも、逻辑(Luo Ji)は最初は、今日を生きているただの個人で、面壁者(Wallfacer)なんかやりたくないというキャラでした。
しかし逻辑(Luo Ji)は愛する顔(color)と娘を取り戻すために、面壁者(Wallfacer)を真剣にやります。もし愛する人=顔(color)がいなかったら、逻辑(Lou Ji)はやる気を出して地球を救えただろうか?と想像すると、逆説的に、愛する人がいる状態=colorfulと作者は定義づけているのかもしれません。
黒暗森林(The Dark Forest)の感想
前振りでしかない第1部ですでにめちゃくちゃおもしろかったのに、第2部はさらにおもしろくなっていて本当に楽しめました。
特に楽しめた点を、以下の3つに整理してみました。
いよいよ三体文明との対決開始
第1部での前振りを経て、第2部ではいよいよ地球文明vs三体文明の戦いが本格化します。この遂に始まった感が第2部のバックボーンになる魅力だと思います。
と言っても、三体文明の戦艦が地球に到着するのはまだ4世紀先のことなので、直接的な戦闘ではなく、第2部は頭脳戦。
地球防衛軍は4人の面壁者(Wallfacer)を任命し、三体文明はそれぞれに破壁者(Wallbreaker)をあてがうという設定が、よくできてるなと思いました。
三体文明強すぎ!地球の絶望感がヤバかった
途中で三体文明の探索機、水滴(the Droplet)が一足先に地球にやってくるのですが、地球軍の宇宙戦艦2000隻がたった1機の探索機に次々とやられていくシーンが衝撃でした。
「三体文明強すぎ地球オワタ」ってなったときの絶望感が良かった、というか作者が上手かったと思います。
最後はLoveの話で綺麗に着地
その後、逻辑(Luo Ji)ががんばって何とか地球は危機を脱し、最後はloveの話で綺麗に着地。小説も娯楽ですから、私はこういう綺麗な終わり方は好きです。絶望への振り幅が大きかったからか、最後に少しだけあるLoveの話が美しく感じました。作者は絶望を書きたくて書いてるんじゃなくて、希望を引き立てるために絶望を書いてるのだと思いました。

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