『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ )』を英語で読む【難易度・名言/名場面・登場人物/あらすじ】洋書 The Catcher In The Rye

『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』を英語で読む【難易度・名言/名場面・登場人物/あらすじ】洋書 The Catcher In The Rye


最近『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』を10年ぶりに再読したので、まとめ記事を作成しました。

読んだのは、10年前も今回も、英語の原書『The Catcher In The Rye』です。

久しぶりに読んでみたら、当時より英語力が上がっていることもあり、本当におもしろくて。

賛否両論いろいろある作品ですが、以前よりもっと『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』が好きになってしまいました。

その結果、本記事は大作になっています。

以下に目次を用意しましたので、興味のあるところだけでも、読んでみてください。

May the books be with you!

あなたとともに本がありますように



この記事を書いた人

今年で外資系歴10年目、日本生まれ日本育ちの日本人です。TOEICは対策なしで915(2019年)。独学でここまできた経験を、日本人英語学習者のために共有しています(詳細プロフィールはこちら▶︎)。

失敗しない英語学習法:基礎・オンライン英会話・コーチング・アプリ・TOEIC
失敗しない英語学習法:基礎・独学・オンライン英会話・コーチング・アプリ x TOEIC

英語学習には、何年もの地道な努力が必要で、近道などない。 これは半分正しくて、半分間違っている、というのが私の考えです。 確かに英語学習には何年もの地道な努力が必要ですが、近道はあります。 今までに何 ...

続きを見る






和訳について

以降の日本語訳はブログ筆者によるもので、自然な和訳にはしていません。

なぜなら、それは翻訳者の仕事であり、私たち読者の仕事ではないからです。

私たち読者は、英語を英語のまま、英語の語順で、流れを止めずに理解していきましょう。そのための参考になるよう、あえてこのような訳にしています。

Sushi K
自然な和訳をお求めの方は、和訳本をご覧ください。

『ライ麦畑でつかまえて』とは?ざっくり紹介

『ライ麦畑でつかまえて』とは?原題は『The Catcher In The Rye』作者はJ.D.サリンジャー

原題は『The Catcher In The Rye』

『ライ麦畑でつかまえて』とは?

  • 原題:The Catcher In The Rye
  • 作者:J.D.サリンジャー
  • 発表:1951年
  • 舞台:当時のニューヨーク
  • 形式:長編小説
  • 物語:高校を退学になり寮を出た16歳の少年が、家に帰るまでの3日間の出来事。
  • テーマ:子供のイノセンスvs大人のフォニー(インチキ)。
  • 映画化:なし

作者はJ.D.サリンジャー

J.D.サリンジャーとは?

  • アメリカの小説家(1919年1月1日 ~ 2010年1月27日)
  • 第二次世界大戦に従軍。過酷な戦場を生き延びた。
  • 戦後PTSDに苦しむが、それを乗り越え発表した『The Catcher In The Rye』が大ヒット。
  • 詳しくは、映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』がおすすめ。

『ライ麦畑でつかまえて』にまつわるあれこれ

  • 全世界で6500万部以上の売上(現在でも毎年50万部以上売れ続けている)
  • ジョン・レノン殺害犯マーク・チャップマンの愛読書
  • 関連作品:天気の子(家出した主人公が所有)、攻殻機動隊(ハッカーの笑い男が『ライ麦畑~』の文↓を引用)
  • 引用文:I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes(僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた)


洋書 The Catcher In The Rye 英語の難易度/レベル

難易度/レベルは中の下:読みやすくておすすめ!



私の主観では、『The Catcher In The Rye』の英語の難易度/レベルは「中の下」です。

シンプルな単語と文章が中心なので、洋書初心者の人でも読みやすいです。

簡単なのに「下」とせず、「中の下」とした理由は、主人公ホールデンが多用するスラングにあります。

さすがにスラングは辞書を引かないと理解できないからです。

でも、安心してください。これらのスラングは何度も出てくるので、自然に慣れて行きます。

Sushi K
以下にスラング10選と主人公の口ぐせ9選を整理したので、参考にしてください。

スラング10選と使用回数まとめ

  • goddam:ガッデム(クソ、チクショウ)(245回)
  • damn:クソ、チクショウ(125回)
  • Kill:うんざりさせる、台無しにする(64回)
  • bastard:嫌なヤツ、ろくでなし、クソ野郎(62回)
  • lousy:シラミがたかった、ひどい(50回)
  • dough:現金、現なま(49回)
  • phony:インチキ、偽物、ウソ(50回)(※phonies, phoniestも含む)
  • for chrissakes:クソッ!(32回)
  • crap:クソ、クズ、ウソ(27回)
  • moron:バカ、マヌケ(24回)

※回数は全文PDFで検索してヒットした数。

Sushi K
くれぐれも、現実世界で使わないようにw

主人公ホールデンの口ぐせ9選

  1. and all(396回):文末にやたらと付けてくる
  2. hell(281回): いちいちhell言い過ぎ
  3. really(228回): No.3だけど、これが一番ホールデンっぽい
  4. boy(160回):村上春樹の「やれやれ」に相当
  5. kill(64回):○○す以外の意味=死ぬほどうんざりさせる、まいらせる
  6. hate(61回):思春期の少年、気に入らないもの多すぎw
  7. if you want to know the truth(22回):これもやたらと付け加えてきます
  8. admit(16回):ホールデンは都合の悪いこともしっかり認めるいいやつです
  9. old(不明):長く付き合いがある、愛着を込めた表現

※回数は全文PDFで検索してヒットした数。

Sushi K
こちらは簡単な解説を用意しました。

1. and all:文末にやたらと付けてくる

  • 頻度:396回
  • 例:I'd just be the catcher in the rye and all.
  • 訳:僕はライ麦畑のキャッチャー(的なナンヤカンヤ)になりたい。
  • and allは上手く訳せないのですが「関連するもの全てを含む的な雑な言い方」のニュアンスで、私は解釈しました。

2. hell: いちいちhell言い過ぎ

  • 頻度:281回
  • 例: I didn't know what the hell to say.
  • 訳:いったい何て言えばいいかわからなかった。
  • 教科書的には驚きや怒りを表す「いったい」という意味ですが、ホールデンはイキがって言ってるだけで、実際はそこまで驚いたり怒ったりしてないと思います。

3. really: これが一番ホールデンっぽい

  • 頻度:228回
  • 例:I got excited as hell thinking about it. I really did.
  • 訳:それを考えると本当に興奮した。本当に。
  • 最後の「I really did」が上手く和訳できないのですが、直前の文を短縮して繰り返す「S really V」という形式は典型的な口癖で、これが一番ホールデンっぽいと言っても過言ではないかもしれません、なぜならホールデンの口癖を真似したネット上の書き込みはだいたいこれだからです。

4. boy:村上春樹の「やれやれ」

  • 頻度:160回(注:ホールデンを指して「少年」の意味で使われている場面も混在)
  • 例:Boy, his bed was like a rock.
  • 訳:やれやれ、彼のベッドは岩のように硬かった。

5. kill:○○す以外の意味=死ぬほどうんざりさせる、まいらせる

  • 頻度:64回
  • 例:He kept telling her she had aristocratic hands. That killed me.
  • 訳:彼はずっと彼女に高貴な手だと言い続けていた。これには死ぬほどうんざりした。

6. hate:思春期の少年、気に入らないもの多すぎw

  • 頻度:61回
  • 例:Grand. There's a word I really hate. It's a phony. I could puke every time I hear it.
  • 訳:立派な。僕が本当に嫌いな単語だ。grandなんてインチキだ。それを聞くたびに吐き気がする。

7. if you want to know the truth:これもやたらと付け加えてきます

  • 頻度:22回
  • 例:I'm a pacifist, if you want to know the truth.
  • 訳:僕は平和主義者だ、本当のことを言うと。

8. admit:ホールデンは都合の悪いこともしっかり認めるいいやつです

  • 頻度:16回
  • 例:I was pretty nervous. I admit it.
  • 訳:僕はとても緊張していた。それは認める。

9. old:長く付き合いがある的な意味の、愛着を込めた表現

  • 頻度:不明(told, gold, moldなどもヒットしてしまうため)
  • 例:I said to old Phoebe
  • 訳:僕はオールド・フィービーに言った。
  • 関連:『グレート・ギャツビー』で頻出する「old sport = 親友」のoldと同じ使い方

文体も魅力的

『The Catcher In The Rye』は文体が独特で、とにかく文体に魅力があります。

英語だと、文体の違いまではわからないという人も多いと思いますが、『The Catcher In The Rye』はそんな方にこそ、おすすめです。

本作の文体(=主人公ホールデン・コールフィールドの目線で語られる、一人称の口語体)を読めば、きっと他の英文とは一線を画す、唯一無二の世界観が感じられるはずです。


ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)の登場人物/あらすじ

主な登場人物 10人

『ライ麦畑でつかまえて』の登場人物を英語+和訳で紹介(キャッチャーインザライ)


主な登場人物 10人

  1. ホールデン・コールフィールド:本作の主人公(サリンジャーを投影)
  2. D.B.:ホールデンの兄、作家(サリンジャーを投影)
  3. アリー:ホールデンの弟(キャッチャー役)
  4. フィービー:ホールデンの妹(キャッチャー役)
  5. アクリー:寮の学生(年上)で、隣の部屋に住んでいる
  6. ストラドレーター:寮のルームメイト、ハンサムでナルシスト
  7. サリー:ホールデンのデート相手、めちゃかわいい
  8. ジェーン:ホールデンの家の隣に住んでいた女の子、厳密には美人ではない
  9. スペンサー先生:退学になった高校の歴史の先生、お説教がうざい
  10. アントリーニ先生:昔の高校の国語教師、最高の先生
『ライ麦畑でつかまえて』の登場人物を英語+和訳で紹介(キャッチャーインザライ)
『ライ麦畑でつかまえて』の登場人物を英語+和訳で紹介【キャッチャーインザライ】

この記事では『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』の登場人物を紹介します。 具体的には、主な登場人物10人を、英語原文を引用しながら、和訳とともに紹介します。 各キャラクターの特徴がわ ...

続きを見る



↑の記事では、主要な登場人物10人を、英語原文を引用しながら紹介しています。

各キャラクターの特徴がわかる部分を抜粋していますので、参考にください。

本記事ではサンプルとして、主人公のホールデンを例に、一部を抜粋して紹介します。

1. ホールデン・コールフィールド:本作の主人公、16才(サリンジャーを投影)

1-1. 髪の右半分が白髪

I'm six foot two and a half and I have gray hair. I really do. The one side of my head--the right side-- is full of millions of gray hairs. I've had them ever since I was a kid.

僕は身長6.25フィート(約190cm)で白髪がある。本当にあるんだ。頭の片側は、右側は何百万本もの白髪でいっぱいだ。僕は白髪だ、子供の頃からずっと。

Sushi K
白髪が老化=成熟=大人になることの象徴ならば、ホールデンは半分子供で、半分大人っていうキャラ設定だと解釈できます。
1-2. 得意科目は国語

All I said was English was my best subject.

僕はただこう言った、国語が一番の得意科目だと。

Sushi K
作家になるほど国語が得意なサリンジャーと重なるキャラ設定ですね。
1-3. 赤いハンチング帽子を逆向きにかぶる=野球のキャッチャー

キャッチャー・イン・ザ・ライの登場人物/あらすじ_赤いハンチング帽子
and then I put on this hat that I'd bought in New York that morning. It was this red hunting hat, with one of those very, very long peaks. 省略 It only cost me a buck. The way I wore it, I swung the old peak way around to the back--very corny, I'll admit, but I liked it that way. I looked good in it that way.

そして僕は今朝ニューヨークで買った帽子をかぶった。それはこの赤いハンチング帽子だ、とてもとても長いタイプのツバがついている。省略 それはたったの1ドルだった。僕のかぶり方は、ツバを後ろ向きにする、とても田舎くさい、それは認める、でも僕はこのかぶり方が好きなんだ。僕にはこのかぶり方が似合う。

Sushi K
帽子のツバを後ろ向きにする=野球のキャッチャー=ライ麦畑のキャッチャーと解釈できますよね。本作は赤いハンチング帽子に注目して読み進めると、より深い読み方ができます(下記記事参照)。
『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳ではない!一流の翻訳!(キャッチャーインザライ)
『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳ではない!一流の翻訳!【キャッチャーインザライ】

『The Catcher In The Rye(キャッチャーインザライ)』の和訳、『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳である。 その理由は下記の3点である。 英語原文は『The Cather In The ...

続きを見る


あらすじ - 全体像・3行要約・テーマ

全体像

16歳の主人公ホールデンが高校を退学になり、寮を出て家に帰るまでの3日間の出来事を、ホールデン目線の口語体で語る。

3行要約

  • 1日目:高校を退学になり、寮を出て、家のあるニューヨークへ夜行列車で移動する。
  • 2日目:今家に帰り、両親が退学を知る時に鉢合わせるのがいやで、ニューヨークの街をプラプラして1日時間をつぶす。
  • 3日目:ニューヨークに居場所がなく、西部にヒッチハイクしようとするが、妹のフィービーにキャッチされる。

テーマ

子供のイノセンスと大人のフォニー(インチキ)の間で揺れ、社会に適合できない少年の気持ち(夏目漱石の『坊ちゃん』と太宰治の『人間失格』を足して2で割った感じ)。

ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)の名言/名場面

名言

2章
"Life is a game, boy. Life is a game that one plays according to the rules." "Yes, sir. I know it is. I know it." Game, my ass. Some game. If you get on the side where all the hot-shots are, then it's a game, all right--I'll admit that. But if you get on the other side, where there aren't any hot-shots, then what's a game about it? Nothing. No game.

「人生はゲームだよ、少年。人生はルールに従ってプレイするゲームだ。」「はい、先生。そのことは理解しています。わかっています。」ゲームかよ、クソくらえ。もし優秀なやつらのチームなら、それはゲームだろうよ、確かにな、それは僕も認める。でももし逆のチーム、バカばかりのチームだったら、どうするんだ?ありえない、何がゲームだ。

3章
What really knocks me out is a book that, when you’re all done reading it, you wish the author that wrote it was a terrific friend of yours and you could call him up on the phone whenever you felt like it.

僕が本当に感動するのは本だ、全部を読み終わったとき、筆者が最高の友人で、電話したいときにいつでもかけられたらいいな、って気持ちになれる、そんな本だ。

12章
People always clap for the wrong reasons.

人はいつだって間違った理由で拍手する。

12章
I’m always saying “Glad to’ve met you” to somebody I’m not at all glad I met. If you want to stay alive, you have to say that stuff, though.

僕はいつも「会えてうれしかったです」って言う、会っても全くうれしくない人に向かって。でも、もし(この社会で)生きていきたければ、そういうことは言わないといけない。

16章
Certain things, they should stay the way they are. You ought to be able to stick them in one of those big glass cases and just leave them alone.

ある種のものは、ずっとそのままでいるべきだ。大きなガラスケースに入れて、そのままにしておくことができたら一番いい。

17章
If you do something too good, then, after a while, if you don’t watch it, you start showing off. And then you’re not as good any more.

何かを上手くなりすぎると、そのうち、気をつけないと、それを見せびらかしてしまうようになる。そうなったらもう、上手くもなんともなくなる。

20章
Who wants flowers when you’re dead? Nobody.

死んだ後で、誰が花なんかほしがる?誰もほしがらない。

24章
You don’t know what interests you most till you start talking about something that doesn’t interest you most.

何に興味があるかなんてわからない、あまり興味のないことを話し始めてみるまでは。

24章
The mark of the immature man is that he wants to die nobly for a cause, while the mark of the mature man is that he wants to live humbly for one.

未熟な人間の特徴は、大義のために高貴に死のうとすることにある。一方、成熟した人間の特徴は、大義のためにつつましく生きようとすることにある。

24章
Happily, some of them kept records of their troubles. You’ll learn from them―if you want to. Just as someday, if you have something to offer, someone will learn something from you. It’s a beautiful reciprocal arrangement. And it isn’t education. It’s history. It’s poetry.

幸いにも、彼らの何人かは悩みの記録を残してくれている。君は彼らから学ぶことができる ー もし君が望めばだけれどね。同じようにいつか、もし君に何か人に与えられるものがあれば、誰かが君からそれを学ぶだろう。これは美しい相互援助だ。教育じゃない。歴史だ。詩だ。

25章
I thought what I’d do was, I’d pretend I was one of those deaf-mutes. That way I wouldn't have to have any goddam stupid useless conversations with anybody.

僕はそうしようと思った、耳が聞こえず、話すこともできない人のふりをしようと。そうすれば、クソつまらねえ無駄な会話を誰ともしなくてすむから。

26章
Don’t ever tell anybody anything. If you do, you start missing everybody.

誰にも何も話さない方がいい。もし話せば、みんなのことを思い出してさみしくなるから。


名場面

私的名場面4選

  1. 池のアヒルに自分を重ねる場面
  2. フィービーが壊れたレコードを受け取ってくれる場面
  3. タイトル『ライ麦畑でつかまえて』の意味が明かされる場面
  4. 回転木馬でのラストシーン

1. 池のアヒルに自分を重ねる場面

2章
I live in New York, and I was thinking about the lagoon in Central Park, down near Central Park South. I was wondering if it would be frozen over when I got home, and if it was, where did the ducks go. I was wondering where the ducks went when the lagoon got all icy and frozen over. I wondered if some guy came in a truck and took them away to a zoo or something. Or if they just flew away.

僕はニューヨークに住んでいる、そして、セントラルパークサウス(ストリートの名前)近くの、セントラルパーク内の池のことを考えていた。僕が家に帰るころ、池は凍っているのかなぁ、そして、もし凍っているなら、アヒルたちはどこに行くのだろう?僕は考えていた、池が完全に凍っているとき、アヒルたちはどこに行くのだろうって。誰かがトラックで来て、動物園に連れて行ったりするのか。そうじゃなければ、アヒルたちはただどこかに飛んで行くのか。

Sushi K
行き場もなく、ニューヨークの街をさまようホールデンを、池が凍り居場所がなくなったアヒルと重ねているのでしょう。
高校生のホールデンが抱えている、将来の進路への不安を象徴しているとも考えられると思います。
うなぎ

アヒルの話は、↓の記事でもう少し詳しく触れています。

『ライ麦畑でつかまえて』の感想(キャッチャーインザライ/英語で読んでみた)
『ライ麦畑でつかまえて』の感想【キャッチャーインザライ/英語で読んでみた】

最近『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』を10年ぶりに再読したので、感想をまとめてみました。 読んだのは、10年前も今回も、英語の原書『The Catcher In The Rye』です ...

続きを見る

2. フィービーが壊れたレコードを受け取ってくれる場面

21章
Then I told her about the record. "Listen, I bought you a record," I told her. "Only I broke it on the way home." I took the pieces out of my coat pocket and showed her. "I was plastered," I said. "Gimme the pieces," she said. "I'm saving them." She took them right out of my hand and then she put them in the drawer of the night table. She kills me.

それから僕は彼女にレコードのことを話した。「聞いてくれ、僕は君にレコードを買った」僕は彼女に言った。「ただ、帰る途中で壊してしまったんだ」僕はかけらをコートのポケットから取り出し、彼女に見せた。「僕は酔っ払っていた」僕は言った。「かけらをちょうだい」彼女は言った。「私が保管しておいてあげる」彼女はかけらを僕の手からとり、入れた、ナイトテーブルの引き出しに。これにはやられたよ。

Sushi K
割れたレコードは、ホールデン自身の心を象徴しています。
妹のフィービーは、それをも受け入れてくれる。とても感動的な場面です。
うなぎ

3. タイトル『ライ麦畑でつかまえて』の意味が明かされる場面

22章
"Anyway, I keep picturing all these little kids playing some game in this big field of rye and all. Thousands of little kids, and nobody's around--nobody big, I mean--except me. And I'm standing on the edge of some crazy cliff. What I have to do, I have to catch everybody if they start to go over the cliff--I mean if they're running and they don't look where they're going I have to come out from somewhere and catch them. That's all I'd do all day. I'd just be the catcher in the rye and all. I know it's crazy, but that's the only thing I'd really like to be. I know it's crazy."

「とにかく、僕は子供たちが大きなライ麦畑で遊んでいるところを写真に取り続ける。何千人もの子供たち、ほかには誰もいない、大人はいない、僕以外は、って意味だけど。そして、僕は危険な崖の端に立っている。僕がやることは、崖から落ちそうになる子たちをつかまえること。ーーつまり、彼らが走っていて、その先の崖が見えていないとき、僕が出て行って、彼らをつかまえるんだ。僕はこれを1日中やる。僕はただライ麦畑のキャッチャーになりたい。狂った発想だってことはわかってる、でも僕が本当にやりたいのはこれだけだ。狂ってることはわかってる。」

『キャッチャー・イン・ザ・ライ(The Catcher In The Rye)』というタイトルの由来が明かされる、とても重要な場面です。

しかし、本書の和訳『ライ麦畑でつかまえて』について、「キャッチャーはキャッチする側だけど、つかまえてはキャッチされる側だから、これは誤訳だ」という誤解があるのも事実です。

結論から言うと、私は誤訳ではなく名訳だと思っているのですが、これだけで一記事書けるほど内容があるテーマなので、別記事にまとめました。

興味のある方は、こちらもぜひご覧ください。

『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳ではない!一流の翻訳!(キャッチャーインザライ)
『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳ではない!一流の翻訳!【キャッチャーインザライ】

『The Catcher In The Rye(キャッチャーインザライ)』の和訳、『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳である。 その理由は下記の3点である。 英語原文は『The Cather In The ...

続きを見る


4. 回転木馬でのラストシーン

25章
Boy, it began to rain like a bastard. In buckets, I swear to God. All the parents and mothers and everybody went over and stood right under the roof of the carrousel, so they wouldn't get soaked to the skin or anything, but I stuck around on the bench for quite a while. I got pretty soaking wet, especially my neck and my pants. My hunting hat really gave me quite a lot of protection, in a way; but I got soaked anyway. I didn't care, though. I felt so damn happy all of sudden, the way old Phoebe kept going around and around. I was damn near bawling, I felt so damn happy, if you want to know the truth. I don't know why. It was just that she looked so damn nice, the way she kept going around and around, in her blue coat and all. God, I wish you could've been there.

やれやれ、雨が降り始めた、クソみたいに。バケツの中みたいだ、僕は神に誓う。他の親、母、全員、回転木馬の屋根の中に逃げ込んだ、ずぶ濡れにならないように、でも僕はベンチの周りに立っていた、かなりの時間。僕はずぶ濡れになった。、特に首とパンツが。僕のハンチング帽子はかなり雨をしのいでくれた、ある意味;でも僕はずぶ濡れになった、とにかく。僕は気にしなかったけど。僕はとても幸せに感じた、突然、オールド・フィービーが(回転木馬で)周り続ける様子に。僕は大声で叫びたくなるくらい、とてつもない幸せを感じた、本当のことを言うと。なぜかはわからない。ただ彼女がとてもナイスに見えた、彼女が周り続ける様子が、青いコートを着ていたりなんやかんやが。まったく、君もここにいればよかったのに(君にも見せたかった)。

このラストシーンは、正直、1回読んだだけではよくわかりませんでした。

なぜホールデンは回転木馬に乗るフィービーを見て幸せを感じたのか?

再読したり、ネットで他の人のコメントを読んで行くと、どうやら下記の2点が重要な意味を持っているようです。

  • ホールデンは、ある種のものは、ずっとそのままでいるべきだと思っている(16章)
  • 妹のフィービーは、昔から回転木馬が大好きで、今も昔と同じように回転木馬を楽しんでいる。

16章
Certain things, they should stay the way they are. You ought to be able to stick them in one of those big glass cases and just leave them alone.

ある種のものは、ずっとそのままでいるべきだ。大きなガラスケースに入れて、そのままにしておくことができたら一番いい。



上記2点を踏まえた上で、ラストシーンを解釈すると

  1. 崖から落ちてしまった自分を妹のフィービーがキャッチしてくれた。
  2. キャッチャーのフィービーが、回転木馬で回り続ける様に、ある種の永遠性を感じた。
  3. キャッチャーが永遠性を獲得したので、キャッチされた自分も永遠に安心な気がした。

フィービーだって大人になるし、永遠なんてないことはホールデンもわかっていると思いますが、でも、この時は、確かに永遠を感じた。

たとえ錯覚であったとしても、永遠を感じたその瞬間は、確かに幸せを感じた、ということなのだと思います。


ホールデンのニューヨークでの3日間は、このシーンで終わり(25章)、最終章26章の精神病患者が療養する施設へ物語の時間と場所が移動します。

ホールデンが社会に反発するところは夏目漱石の『坊ちゃん』、精神を病むところは太宰治の『人間失格』みたいだなと思います。


『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』をさらに理解するために

  • 映画:ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー
  • 2作の短編:『Slight Rebellion Off Madison』と『I’m Crazy』

映画:ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

映画:ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー


映画、『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』は、サリンジャーの半生を描いた伝記映画です。

もちろん、『ライ麦畑でつかまえて』の誕生過程も含まれているので、本書をより深く理解したい方にとっては、おすすめの映画です。

過酷な戦場や、戦後PTSDで苦しむシーンは、胸に迫ってくるものがあり、『ライ麦畑でつかまえて』のファンである私は、この映画を見て本当に良かったと思いました。

『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』の原型:短編2作

  • Slight Rebellion Off Madison (1946年発表)(全文リンク
  • I’m Crazy (1945年発表)(全文リンク
  • 補足:『ライ麦畑でつかまえて』は1951年発表

Slight Rebellion Off Madison

この短編は、ホールデン・コールフィールドが初めて登場した作品です。

1941年に雑誌ニューヨーカーに掲載が決まっていましたが、太平洋戦争の開戦により、作品の掲載は延期され、サリンジャーは失望します(掲載は1946年に)。

『Slight Rebellion Off Madison』と『ライ麦畑でつかまえて』の違いは、例えば

  • 『Slight Rebellion Off Madison』:ホールデンとサリーのデート中、2人はキスをする。
  • 『ライ麦畑でつかまえて』:デート中、2人はキスしない。

この2作の間で、ホールデンのキャラが発する印象がどう違うか、物語のどこがカットされ、何が追加され、どのように仕上がったか、

これらに注目して読むと楽しいです。

I’m Crazy

『I'm Crazy』は、1945年、雑誌コリアーズに掲載された短編で、こちらも『ライ麦畑でつかまえて』の原型となる作品です。

両作品の違いは、例えば

  • 『I'm Crazy』:高校を退学になった後、ニューヨークの街はさまよわず、家に直帰する。
  • 『ライ麦畑でつかまえて』:退学と家の間に、ニューヨークをさまよう物語を追加。

サリンジャーが、『Slight Rebellion Off Madison』と『I'm Crazy』という素材を、

どのようにリアレンジし、『ライ麦畑でつかまえて』に仕上げたかのか?

そこを意識して読むと、『ライ麦畑〜』ファンは楽しめると思います。

Sushi K
これらの短編から完成版へと発展していく過程は、映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』にも描かれています。
サリンジャーと『ライ麦畑でつかまえて』をより深く理解するために、必見かつおすすめの映画です。
うなぎ

『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』の感想【英語で読んでみた】

『ライ麦畑でつかまえて』の感想(キャッチャーインザライ/英語で読んでみた)


感想の概要

  • RyeとLie、韻を踏んでいる
  • 『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』は文体が魅力的
  • 野崎訳と村上訳は野崎訳がおすすめ
  • 『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』で私に刺さったシーン
  • ホールデンに共感できるか?『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』は今の自分を写す鏡
  • イノセンスvsフォニー:ホールデンが戦っていたものは、今も解決されていない
  • 『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』を書いたのは誰?
  • セントラルパークのアヒルの話、めっちゃわかる
  • 『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳?キャッチする側とされる側問題


『The Catcher In The Rye』は世界文学史上に残る名作だけあって、読んでみて感じたことはたくさんあります。

私はざっっと上記のようなことを感じたのですが、文字数の都合で別記事に分けました。

興味のある方はこちらもぜひご覧ください。

『ライ麦畑でつかまえて』の感想(キャッチャーインザライ/英語で読んでみた)
『ライ麦畑でつかまえて』の感想【キャッチャーインザライ/英語で読んでみた】

最近『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャーインザライ)』を10年ぶりに再読したので、感想をまとめてみました。 読んだのは、10年前も今回も、英語の原書『The Catcher In The Rye』です ...

続きを見る



この記事は以上です。


米国版ペーパーバック

和訳(原書の雰囲気重視)

和訳(読みやすさ重視)

関連記事



Amazon Kindle(アマゾンキンドル)
created by Rinker
Amazon

洋書を読むときは、ワンタッチ辞書機能のあるAmazon Kindle(アマゾンキンドル)が便利です。

特にこだわりがなければ、もっとも標準的な↑のPaperwhiteモデルがおすすめです(私が使ってるのもこれです)。

他モデルとの違いなど細かなことは、アマゾン公式サイト内の比較表をご覧ください。

参考までに、当ブログの Amazon Kindle(アマゾンキンドル)レビュー記事はこちらです。

Kindleの英語辞書最高!洋書多読中毒者のKindleレビュー【PaperwhiteとOasisも比較】
Kindleの英語辞書最高!洋書多読中毒者のKindleレビュー【PaperwhiteとOasisも比較】

洋書多読は私の趣味の1つで、Kindleの英語辞書には大変お世話になっています。 もともと読書好き、英語好きだったところに、Kindleという神デバイスが加わり、完全に洋書中毒になりました。 特に、K ...

続きを見る



Audible(オーディブル)

Amazon(アマゾン)Audible(オーディブル)

最近は洋書を聴く楽しみ方もあって、新しい世界が広がっています。

  • 耳を使えば、読書はもっと自由になる!
  • ついでに英語力もアップ!

詳しくは、公式サイトまたは詳細記事をご覧ください。

▶︎Audible(オーディブル)の無料体験はこちら

英語でAudible(オーディブル)!選び方/勉強法/おすすめ洋書50選【初心者/中級者/上級者レベル別】
英語×Audibleおすすめ洋書50選!作品の選び方&勉強法【初心者/中級者/上級者レベル別】オーディブル大好き!

洋書&読書大好き人間だった私は、最近は完全に、活字派からAudible(オーディブル)派になりました。 この変化には自分でも驚いていて、Audible(オーディブル)が大好きすぎて、正直、活字を読むの ...

続きを見る



■英語TOPページ

失敗しない英語学習法:基礎・オンライン英会話・コーチング・アプリ・TOEIC
失敗しない英語学習法:基礎・独学・オンライン英会話・コーチング・アプリ x TOEIC

英語学習には、何年もの地道な努力が必要で、近道などない。 これは半分正しくて、半分間違っている、というのが私の考えです。 確かに英語学習には何年もの地道な努力が必要ですが、近道はあります。 今までに何 ...

続きを見る

■転職TOPページ

【脱・失敗】転職・退職の注意点と解決方法【リスク回避】
【脱・失敗】転職・退職の注意点と解決方法

5回転職してわかった10のこと 人生は転職で本当に変わる。 転職先は意外な程たくさんある。 ホワイト企業は普通に存在する。 ダメな会社は優秀な人から辞めて行く。 転職に罪悪感は不要。社員に辞められる会 ...

続きを見る




価格満足度No1
  • この記事を書いた人

Sushi K

日系企業を3年未満で退職し、外資系10年以上(4社目)。現職はメディカルライターとして、新薬の開発/承認申請に関する文書を書いています。日本で生まれ、日本で育ち、日本で英語を勉強しました(TOEICは対策なしのぶっつけで915@2019年)。帰国子女でも留学経験者でもない、普通の日本人だからこそ伝えられることを、英語、転職を中心に発信していきます。詳細プロフィールはこちら

-楽しく英語学習, 洋書, 英語

© 2023 外資系歴10年以上、英語とか転職とか Powered by AFFINGER5