ヘミングウェイの短編で英文法が学べる『ヘミングウェイで学ぶ英文法』を、すべての英語学習者におすすめします。
私がこう言い切る理由は、以下のギャップに秘密があります。
- ヘミングウェイの文章は中学レベルの単語がほとんどで、文の構造もシンプル。
- にもかかわらず、心情の揺れや情景描写が生き生きと伝わってくる。
中学レベルの単語とシンプルな文で、なぜこんなことができるのでしょうか?
その答えは、単語の意味が担当する範囲を制限することで、文法の力を最大限に利用しているからです。
だからこそ、ヘミングウェイの文章は文法の理解に役立つ、というわけです。
しかも、短編なので物語が短く、読むのが楽(1話平均10分以内)。
文法が持つ力を理解すれば、現在の英語力も今後の勉強効率も格段に上がります。
細かなニュアンスまでしっかりわかれば、会話も読み書きも、すべてがワンランクアップ。
この記事では、英語を勉強するすべての人におすすめしたい名著、
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』を紹介していきます。
この記事を書いた人
今年で外資系歴10年目、日本生まれ日本育ちの日本人です。TOEICは対策なしで915(2019年)。独学でここまできた経験を、日本人英語学習者のために共有しています(詳細プロフィールはこちら▶︎)。
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ヘミングウェイとは?ざっくり紹介
ヘミングウェイとは?
- アメリカ文学および世界文学を代表する小説家(1899年7月21日〜1961年7月2日)
- 主に『老人と海』が評価され、1954年ノーベル文学賞受賞
- 無駄を削ぎ落としたソリッドかつ、シンプルで客観的な文体が特徴
私は『日はまた昇る』が特に好きで、約10年前に英語の原書『The Sun Also Rises(▶︎Amazon)』でも読んだほどです。
しかし、本記事で紹介する『ヘミングウェイで学ぶ英文法』を読んだ今は、
「当時は感覚で読んでいたなぁ」、「読めた気になっていたけど、実際は十分に理解できていなかったんだろうなぁ」、と反省することばかり。
いつか時間を作って『The Sun Also Rises』を再読したいと思っています。
私が『ヘミングウェイで学ぶ英文法』をおすすめする3つの理由
おすすめする3つの理由
- 英文法の理解が深まり、ワンランク上の英語力が手に入る
- ヘミングウェイは短編の名手!1話10分、サクッと読める!
- 洋書多読の前に必読!その他もすべてが効率アップ!
英文法の理解が深まり、ワンランク上の英語力が手に入る
ワンランク上の英語力
- 仮定法過去完了で、相手をなじる。
- 時制の使い分けで、夫婦の不仲を浮き彫りにする。
- 助動詞の使い分けでも、男女のすれ違いを表現する。
- 突如挿入される過去完了で、会話の沈黙を表現する。
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』を読むと、文法の理解が深まり、ワンランク上の英語力が手に入ります。
今これを理解してしまえば、今後の英語人生をターボエンジン付きで過ごせるようなもの。
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』のすごいところは、
これらのすべてが、単語の意味ではなく、文法の力で表現されていることを、
わかりやすく教えてくれるところにあります。
ヘミングウェイで学ぶ英文法2
こちらは最近(2019年12月)発売された『ヘミングウェイで学ぶ英文法2』です。
『1』が大満足だった私は『2』も早速購入。
『2』の帯が見事だったので以下に引用します。
代名詞が過去を暗示し、比較級が消えた情景を呼び起こす。
倒置構文が生と死を語り、助動詞が時を巻き戻す。
文法学習とはなんとスリリングな文学の冒険だろう。
鴻巣友季子氏(翻訳家)
これらすべてを表現するために、単語の意味に頼って文字数を増やしたり、文の構造を複雑化させるのは、芸がないというもの。
一流の作家は、言葉の意味に頼らずに、心情や情景を描写する。
表現が安直じゃないから、解釈に深みが生まれます。
最近のJ-POPの歌詞批判になってしまいますが、「会いたい」とかを直接書いてそれで終わりっていうのは子供の作文なわけで、その気持ちを比喩なり、なんなりで、別の何かで表現するのが作詞でしょ、っていうのに近いと思います。
ヘミングウェイは短編の名手!1話10分、サクッと読める!
ヘミングウェイは短編の名手!
この機会に、Wikipediaの作品リストを数えてみると、長編小説の7〜8倍の短編小説を書いていたことがわかり、私自身も驚きました。
よく「量は質に転化する」と言いますが、ノーベル文学賞を受賞するほど才能のある作家が、これだけの量の短編を書いていることは見逃してはいけないと思います。
TOEICの長文の練習問題みたいな、つまらない素材とはわけが違いますので、せっかく読むなら楽しんで読める、ヘミングウェイがおすすめです。
1話10分、サクッと読める!
短編小説は文字どおり短いですから、サクッと読めて楽です。
実際、1話平均10分以内で読める作品が、『ヘミングウェイで学ぶ英文法』には収録されています。
特に急いだり、あえてゆっくり読むこともせず、音読として聞くに耐えられる、自然なスピードで読んで、1話平均10分以内。
ヘミングウェイの短編は、気軽に読めるという観点からも、おすすめできる英語学習素材です。
洋書多読の前に必読!その他もすべてが効率アップ!
洋書多読は、英語学習のどこかで、必ずやるべきです。
なぜなら、洋書多読によって量が質に変わる瞬間の壁を突破することができるからです。
実際、私は洋書多読によって「語彙力」「文法力」「文脈からの推測力」などが伸び、4技能(スピーキング、リスニング、ライティング、リーディング)すべてのレベルを大きく底上げできたと思っています。
洋書多読は、本当にやって良かったです。
しかしながら、洋書多読には注意が必要なのも事実です。
なぜなら、英文法の理解が不十分なままだと、
- 内容が理解できない → 楽しめない → 続かなくて挫折
- その他の勉強効率も低下 → 伸びない → 続かなくて挫折
という結果になりやすいからです。
そもそも、洋書多読に限らず、4技能すべてにおいて、文法が要になっていることは、言うまでもありませんよね。
文法の理解が5段階で1だとしたら
悪い例
- 文法1 x スピーキング5 = 5点
- 文法1 x リスニング 5 = 5点
- 文法1 x ライティング5 = 5点
- 文法1 x リーディング5 = 5点
でも、文法の理解が5なら
良い例
- 文法5 x スピーキング5 = 25点
- 文法5 x リスニング 5 = 25点
- 文法5 x ライティング5 = 25点
- 文法5 x リーディング5 = 25点
良くも悪くも、文法理解の有無で、未来は大きく変わります。
例え話としてどうかと思いますが、2018年M1グランプリの、かまいたちのネタみたいなものだと思います。
最初にポイントカードを作っておけば、その後、5年、10年で、たくさんのポイントが貯まり、大きく得できる。
でも、最初に意地を張って、ポイントカードを作らなかったら、その後、5年、10年、本当は貯まっていたはずのポイントはゼロ。
洋書多読を始める前はもちろん、英語を勉強する人は全員、最初に文法をしっかりやっておくことを強くおすすめめします。
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』の内容・感想・勉強になった具体例
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』の内容
本書の内容
- 短編6作品収録(1話平均10分以内)
- 和訳
- 文法講義
- 作品解説
全作品に和訳がついている点は、初心者はもちろん、中級者や上級者にとってもありがたく、安心して手に取ることができます。
全作品を素材にした文法講義は、本書の要であり、英語人生のどこかで、できるだけ早く、読んでおく価値のある内容です。
(TOEIC 900点越えの私が読んでも勉強になる点が多く、洋書を読めた気になっていた、実際は読めていなかった、と反省しきりでした)
全作品に作品解説がついている点は、知的好奇心を刺激し、学ぶことの楽しさを感じられます。
英語に限らず、好き・楽しいのパワーは最強ですよね。読みたいから読む、楽しいから読む。文法の勉強を超えて、英語・洋書・ヘミングウェイを好きになれる仕掛けがある点は、一般的な文法書にはない本書の強みです。
さらに、今これをやっておけば、今後の英語の伸び率が加速するというブースト特典つき。
これらすべてが約2000円はコスパ最高です。
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』の感想
私の感想
- 英文って、こうやって読むんだ。
- 英文を読むときの着眼点がわかった。
- 今まで読んだすべての洋書を、もう一度読み直したい。
TOEIC 900越え、外資系10年目、趣味は読書で長編小説クラスの洋書を30冊以上は読んできた私の、率直な感想です。
正直、今までは読めた気になっていただけで、実際はちゃんと読めていなかった。
小説の美味しい部分を、たくさん取りこぼしてしまっていたんだろうな、と後悔することしきりです。
もっと早く『ヘミングウェイで学ぶ英文法』と出会いたかったです。
知識と実践は別物
上級者の人は、文法知識としては知っていることが多いと思いますが、文法の知識があるということと、その知識を小説の読解に活かせることは、まったくの別物。
私がはまっていた罠も、まさにここでした。
本書のデメリット?アマゾンのレビューをチェック
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』のアマゾンのレビューは好意的なものがほとんどで、
私の主観だけでなく、みんなの客観によっても、本書は評価されています。
しかし、一部「体系性や網羅性に欠ける」というネガティブな意見がある点は、私から補足させてください。
本書のデメリットとして、文法知識の体系性や網羅性に欠ける点があるのは事実です。
でも、本書のタイトルは『ヘミングウェイで学ぶ英文法』なんですよ!
体系性や網羅性は最初から眼中にないわけで、ヘミングウェイの短編小説で英文法が学べる点が、本書の特徴かつメリットなわけです。
したがって、「体系性や網羅性に欠ける」というコメントは、的外れだと私は思います。
体系性や網羅性を求めている方には『一億人の英文法(▶︎Amazon)』をおすすめします。
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』の勉強になった具体例
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』を読んで、私が勉強になった具体例を1つ紹介します。
まずは、以下の会話を読んでみてください。
“I’m going down and get that kitty,” the American wife said.
“I’ll do it,” her husband offered from the bed.
「私、降りていってあの子猫(Kitty)を拾ってくるわ」とアメリカ人の妻が言った。
「僕がやるよ」と彼女の夫はベッドから申し出た。
中学レベルの単語とシンプルな文からなる、誰でも理解できる内容だと思います。
しかし「この2行が夫婦のすれ違いを表現している」と言われたら、いったいどれだけの人が理解できるでしょうか?
ポイントは「be going to」と「will」の違いにあります。
この違いは、文法の知識としては知っていましたし、上級者の人なら知っている人も多いと思います。
「be going to」と「will」
- be going to:現在進行形。話し手の今の状態=気持ちは前からそうなっている(この例では「本気」)。
- will:未来を表す助動詞。話し手の今の意志=今発生した新しい意志(この例では「口先だけ」)。
しかし、文法の知識があることと、読書という実践に活かせることは、まったくの別物。
正直、私は「be going to」も「will」も、未来を表す表現として、同じレベルで解釈し、
この2つの違いが何を意味しているかまでは考えていませんでした。
はいはい、未来のことね、と軽く読み飛ばしていたのです。
「be going to」と「will」という、中学レベルの英語で、夫婦間のすれ違いなんていう大人の機微を表現できるなんて。。。
文法が持つ力をまざまざと感じるとともに、今まで読んできたすべての洋書を読み直したいと思った瞬間でした。
英語の文法に自信のある人も、ない人も、ぜひ一度『ヘミングウェイで学ぶ英文法』を手に取り、読んでみてください。
文法の知識が、小説の読解という実践に活かせるようになりますし、
今後の読書体験、ひいては人生が豊かになるという観点で、投資する価値のある良書としておすすめです。
まとめ
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』まとめ
- 英文法の理解が深まり、ワンランク上の英語力が手に入る
- ヘミングウェイは短編の名手!1話10分、サクッと読める!
- 洋書多読の前に必読!その他もすべてが効率アップ!
- 文法の知識があることと、読書という実践に活かせることは、まったくの別物
- 今後の読書体験、ひいては人生が豊かになる
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