コリーン・フーヴァーさんの勢いが止まりません。
2022年10月18日発売の最新作『It Starts With Us』はニューヨークタイムズ誌のベストセラーリストで初登場1位。しかも同リストは3位『It Ends With Us』、4位『Verity』、7位『Ugly Love』で、TOP 4/10がコリーン・フーヴァー作品。
彼女は今最も売れている作家であり、作品を読んだことはなくても名前だけは聞いたことがあるという方も少なくないと思います。
実は私もそんな一人だったのですが、あまりにも売れすぎているということで、その存在を無視し続けるわけにはいかず、試しに読んでみたところ・・・
まんまとハマってしまいました(笑)
色々と賛否や好き嫌いはあるのでしょうけれど、読んでいて勉強になることも多く、私は愛着と尊敬を込めて勝手に「コリーン先生」と呼んでいます(笑)
この記事は、コリーン・フーヴァーさんを未体験の方に、彼女と作品の魅力を伝えたいと思い書いてみました。
気になっている方や、読まず嫌いしている方に、読んでみようかな?と思ってもらえるよう、熱く語って行きたいと思いますので、ぜひ記事本文もご覧ください!
この記事を書いた人
日本生まれ日本育ちの日本人。外資系歴10年以上、TOEICは対策なしで915(2019年)。英語学習や外資系での経験を、発信・共有しています(詳細プロフィールはこちら▶︎)。
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失敗しない英語学習法:基礎・独学・オンライン英会話・コーチング・アプリ x TOEIC
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コリーン・フーヴァーさんの紹介
コリーン・フーヴァーさんの略歴と人柄
- キンドルの自費出版からスター作家に
- TikTokで勢いにブーストがかかる
- 恵まれない境遇:父親のアル中とDV、両親の離婚
- ファンに愛される人間性はまるでヒカキンさん
1. キンドルの自費出版からスター作家に
コリーン・フーヴァーさんはアメリカのテキサス州出身の作家(1979年生まれ、女性)です。
ソーシャルワーク(恵まれない人々をサポートする仕事)の学位を取得後、ソーシャルワーカーとして働きながら、2011年に出版の意図なく、後のデビュー作『Slammed』を書き始めます。
2012年、ちょうどアマゾンキンドルを買ったばかりの母が読めるようにと『Slammed』を自費出版したところ人気が出て、後にニューヨークタイムズ誌のベストセラーリストにランクインするという奇跡が起こります(というか、今はそういう時代なのでしょうね)。
同年、ソーシャルワーカーの仕事を辞め、フルタイムのライターになります。その後もヒット作を連発し、現在(2022年10月)までの約10年で20作以上のハイペースで出版。総売上げ部数は2000万部以上にもなるそうです。
ちなみに、TikTokを含むネットで見られるCoHortsという表現はコリーン・フーヴァーさんのファンのこと(英単語のcohortは群、集団という意味)、CoHoはコリーン・フーヴァーさんのことを指しています。
2. TikTokで勢いにブーストがかかる
その後もヒット作を連発していた中で、2021年、TikTokでその勢いにブーストがかかります。
TikTokにおけるコリーン・フーヴァーさん関連のタグは現在までに20億以上!という桁違いのバズりを見せ、過去作品が次々と各種ベストセラーリストにランクイン。1作だけでも凄いのに、複数作品が同時にランクインすることが常態化し、トップ10のうち5作を独占したこともあったほどです。
中でも2016年発売の『It Ends With Us』は、2022年1月にニューヨークタイムズ誌ベストセラーリストの1位となり、現在(2022年10月)でも3位を維持し、彼女の最大のヒット作となっています。
コリーン・フーヴァーさん専用のテーブルを用意する本屋さんもあるほどで、まさに時代の寵児と言っても過言ではないくらいにコリーン・フーヴァー旋風が吹き荒れています。
ちなみにTikTokでバズった理由を「colleen hoover tiktok why」で検索しても、イマイチ明確な理由は出てきませでした。どの記事も「TikTokでバズって人気」と書いてあるだけで、なぜTikTokでバズったかという問いには答えていないんです・・・
そんな中で、質問に答えているという意味ではこの記事(How Colleen Hoover Became The Queen Of BookTok)が最善かなと思います。この記事によると、コリーン・フーヴァーさんは「若い女性の共感を得た」ことでバズっていったそうです。
彼女の作風は読者の感情に強く訴えるもので、主人公と一緒に打ちのめされたり、幸せになったり、感動したり、1冊の中で様々な感情を体験でき、その点は私も同意なのですが、ただ、「だから若い女性の共感を得た」とは論理的につながらないと思いました。年齢や性別にかかわらず、どんな読者でも感情を揺さぶられることはあるでしょうし、その中でなぜ若い女性なのか?という問いには、残念ながらこの記事でも触れられてはいません。
そこで個人的には次のように考えてみました。コリーン・フーヴァーさんの作品の主人公は若い女性なので、男性よりは女性の方が共感しやすい(ちなみにこの記事を書いている私は男性です)。また、女性は男性より共感を好むと言われており、SNSは共感の力で拡散していくツールである。したがって、女性x共感x SNSで、前代未聞のスーパーバズに発展していったのかなと考えました。(だからと言ってここまでバズるか?という疑問はいまだに残りますが…)
ちなみに、「コリーン・フーヴァーさんのTikTokでのバズ」と「コロナ禍で読書時間が増えたこと」を結び付けた記事は「colleen hoover tiktok why covid-19」で検索しても1つも特定することはできませんでした。現時点では根拠が見つけられないため、コロナ禍と絡めて論じるのは無理があるかなと思っています(ソースがあればぜひコメントで教えてください!)
もっと言うと、時代の波に乗ることや、若者に受けることが必ずしも良いことだとも思っていません。なぜなら年齢に関係なく人間は間違える生き物であり、若者の判断が間違えている可能性もあるはずだからです。
時代の流れ、若者の選択は、複数の選択肢の中からそれが選ばれたという結果にすぎず、その善悪はまた別の話かなと思っています。
3. 恵まれない境遇:父親のアル中とDV、両親の離婚
コリーン・フーヴァーさんは恵まれない境遇の出身で、そのことが彼女の作風に大きな影響を与えています。
彼女が2歳のころ、父親のアルコール中毒とDVを理由に両親が離婚。4歳のころ、母親は再婚しますが家計の経済状況はずっと苦しかったそうです。
コリーン・フーヴァーさん最大のヒット作『It Ends With Us』はDVを扱っており、この作品は彼女の両親の実話を基づいて書かれました。
コリーン・フーヴァーさんの作品の主人公は、様々な設定がありつつも、「恵まれない境遇の若い女性」という大きな設定は一貫しています。彼女の作品を読みながら、なぜ弱者の気持ちや生活をこんなにもリアルに書けるのかが不思議だったのですが、彼女の過去を知って納得したものです。
コリーン・フーヴァーさんはチャリティー活動にも積極的に取り組んでいますし、作家になる前はソーシャルワーカーでしたから、元々彼女と同じように恵まれない境遇にいる人々を助けたいという思いがある人なのだと思います。
4. ファンに愛される人間性はまるでヒカキンさん
TikTokでバズった理由の補足として、コリーン・フーヴァーさんの愛されキャラもあるようです(前述の記事)。
たしかに、彼女の投稿は面白く、ファンを楽しませつつ上手く作品のプロモーションもできていて、SNSの使い方が上手いなぁと思います。また、彼女自身は現状を「過大評価」、「いつまでも続かない」、「今を楽しむ」と謙虚なコメントをしていることからも、人柄の良さが伝わってきます。詳しくは後述しますが、英語もシンプルで読みやすく、作者も作品も親しみを持ちやすいです。
個人的には、YouTuber界の王、ヒカキンさんに似ているなと思いました。ヒカキンさんは十分凄いんだけど、一方で特別面白いわけでもなく(すみません)、人間性や親しみやすさが人気だと思います(大好きです)。
コリーン・フーヴァーさん自身や作品がSNSでバズってファンに愛されているのも似ているなと思います。本業の力も大事だけど、人に好かれる力のある人が評価されやすいのがSNS時代ですね。
コリーン・フーヴァー作品の特徴
- 英語がカジュアルで読みやすい
- 主人公が恵まれない境遇
- 設定が特殊なのにリアリティーがある
- 萌えポイント多数のロマンス要素
- ロマンスだけじゃない幅広い才能
- ラザニアが登場しがち
1. 英語がカジュアルで読みやすい
コリーン・フーヴァーさんの作品は文章がカジュアルで読みやすいです。ポジティブにとれば親しみやすいとい言えますが、ネガティブにとれば格調高さがなく、文学ガチ勢の評価や賞レースには不利かもしれません。
でもコリーン・フーヴァーさんはそんなものは目指していなくて、自分が楽しむために、弱者のために書いているのだと私は思います。本は何のために、誰のためにあるかを考えれば、自然かつ健全な状況と言えるのではないでしょうか。
2. 主人公が恵まれない境遇
コリーン・フーヴァー作品は、私が読んだ限り例外なく、主人公(若い女性)が恵まれない境遇です。例えば、親が毒親/離婚/良い親でも早くに死別、そして経済的にも苦しいなど・・・。
コリーン・フーヴァーさん自身がそのような境遇出身なこと、アメリカの格差は日本より酷いこと、コリーン・フーヴァーさんがチャリティー活動をしていることを考えると、このお決まりの設定は意図的にやっていると考えて間違いないでしょう。
幸運にも親ガチャで当たりを引いた人は、作品を通じて恵まれない境遇の人たちの気持ちや生活を学び、社会的な意識が高まるでしょうし、親ガチャで外れを引いてしまった人にとっては、自分のことをわかってくれる作家として好きになりやすいと思います。
優劣ではなく方向性の話ですが、人類をより良い方向に導く=ノーベル賞の理念と一致していますね。
3. 設定が特殊なのにリアリティーがある
コリーン・フーヴァーさんの作品は設定が特殊です。
例えば、デビュー作の『Slammed』では引越し先の向かいにイケメンがいて、主人公と同じく(作品的に都合良く)幼いころに両親を亡くしていたり、『Heart Bones』や『Regretting You』ではちょうど男女2名ずつメインキャラがいて2組のカップルができてその間の関係性も複雑だったり、2022年の大ヒット作『Reminders of Him』では、主人公が彼氏を飲酒運転の事故で死なせてしまうのに、物語の恋愛相手としては死んだ彼氏の親友が当てがわれたり。
そんな設定あるかいな!と突っ込みたくなりますよね。私もそう思いました。でも、不思議なことに、読み進めているうちに、いや、こういうこともあるかも、自分も当事者(加害者、被害者どちらでも)になってしまうかも、と思わされるんです。
私はこの特殊な設定は、宇宙での実験に似ていると思います。宇宙という無重力環境では、地球の重力環境では見えないことが見えるようになりますよね。つまり、登場人物を特殊な設定に置くことで、人間が何を感じどう動くのか、そこから人間の本質が浮かび上がってくるというわけです。浮かび上がってくるのは人間の本質ですから、読者は共感せざるを得ません。
4. 萌えポイント多数のロマンス要素
コリーン・フーヴァーさんの作品はアメリカの若い女性の共感を得まくっているので、女性は共感できるポイントが多いと思います。一方、私を含む男性は、作品を通じて女心を学ぶことができます(笑)
例えば、主人公が彼氏役の大きめのシャツを着るシーンは、ツイッターの女性フォロワーさんに教えてもらったところ萌えポイントらしいです(笑)
別の例だと、コリーン・フーヴァーさんの作品は、彼氏役が主人公のおでこにキスするシーンが多いです。主人公もそれ喜んでいるので、きっとここも萌えポイントだなと推測しています。女心を掴みたい男性はキスするとき直ぐ口に行かず、一回おでこをはさむのが良いと思われます。知らんけど(笑)
コリーン・フーヴァー作品の男性キャラは、性格良すぎで包容力ありすぎ。私には真似できないし、世の中の多くの男性も真似できないと思います。でも、だからこそ、そこに学びがあるのではないでしょうか。つまり、コリーン先生を読めば学校の授業では学べない女心を学べる説というわけです(笑)
5. ロマンスだけじゃない幅広い才能
コリーン・フーヴァーさんをジャンル分けするなら主にロマンス作家ということになるようです。
ですが私としては、彼女をロマンス作家と一括りにして偏見を持ってしまうのはもったいないと思います。なぜなら、たしかに物語の軸として主人公と彼氏のロマンス要素はあるものの、それだけでなく、DV、アルコール中毒、ドラッグ中毒、ホームレス、両親の離婚、両親との死別など、社会的弱者を取り巻く様々な社会問題を取り上げているからです。
また、代表作『It Ends With Us』に次ぐ第二の代表作『Verity』は特筆すべき作品です。『Verity』はサイコスリラーというジャンルに分類される怖面白い作品であり、コリーン・フーヴァーさんはこんなものまで書けるのか!と作者の幅広い才能に衝撃を受けました。
『Verity』は個人的に一番好きな作品なので、代表作『It Ends With Us』を読んだ後の2冊目にぜひおすすめしたい作品です。『Verity』は『It Ends With Us』とは方向性が全く違う作品なので、もし『It Ends With Us』が合わなかった方は、そこで切り捨てず、どうか『Verity』にもチャンスをあげてください!
6. ラザニアが登場しがち
コリーン・フーヴァーさんの作品には、lasagna(ラザニア)が登場しがちです。
きかっけは一番下の子ベッカムくんがラザニアのことをbasagnaと言うのがかわいかったらしく、そのエピソードがデビュー作 『Slammed』で採用されたことに始まります。
その後も度々ラザニアが登場し、私が読んだ5/8作でラザニアが登場します。この確率は高いと思いますので、コリーン・フーヴァー作品の特徴と言ってよいと思います。
コリーン・フーヴァー作品が合わない人の声
全員に好かれるのは不可能と言うもの。コリーン・フーヴァーさんは今をときめく超スター作家ではありますが、彼女の作品が合わない人も当然います。
そのような人達は「トラウマポルノ」と感じているようです。確かにこの表現には一理あり、コリーン・フーヴァーさん好きの私としても、一概に否定することはできません。
「コリーン・フーヴァー作品の特徴」で紹介したように、どの作品も主人公が恵まれない境遇の出身で、様々な困難に襲われます。
私としては、作品と似たようなことが現実に起きており、社会的弱者の人々のことを理解するきっかけ、教材として肯定的にとらえているのですが、どのラインを超えると「トラウマポルノ」と感じるのか?その閾値の設定が人によって異なるために、判断が分かれるのかなと推測しています。
コリーン・フーヴァー作品は電子版よりペーパーバック版が売れている
これらは『It Starts With Us』の4週目の、ニューヨークタイムズ誌のベストセラーランキング「電子+紙の総合ランキング」と「ペーパーバックランキング」です。
コリーン・フーヴァーさんの作品は、総合ランキングはTop 5/10、ペーパーバックランキングはTop 8/10にランクイン。どちらも異常とまでも言えるほどの売れ行きですが、ペーパーバック版の方が強い点は注目に値すると思います。
私の推測では、TikTokを始めとするSNSで映えたい人達が、好んでコリーン・フーヴァー作品、特にペーパーバック版を買っているのかなと。コリーン・フーヴァーさんと他の作家と比較したとき、売上差と実力差が比例関係にあるわけはないので、本の内容以外の要素が売上に貢献してると考えるのが自然。ペーパーバックの方が強いことを考えると、SNSで映えたい人達を取り込んだ結果がこの売上に繋がっているのだと思います。
2016年にノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランさんは、今までほとんどI love you baby的な歌詞だった音楽界に文学的な歌詞を持ち込みました。一方コリーン・フーヴァーさんの功績は何かと考えると、本を本好きの人達だけのものから、SNSで映えたい人達にまでリーチを広げた(本の可能性を広げた)ことではないでしょうか。コリーン・フーヴァーさんの場合、本の内容とは関係がありませんが、push the boundary(限界を押し広げる)な点はボブ・ディランさんと同じだなと思いました。
コリーン・フーヴァー売れすぎ意味わからん、で切り捨てるのではなく、もしかして今は時代の変わり目で、これが新しいスタンダード(作品だけじゃなくSNSで強い人が売れる[善悪は別として])なのかも?っていう可能性も頭の片隅にキープしておきたいなと個人的には思っています。
私がコリーン・フーヴァー作品をおすすめする理由
- 英語学習に向いている
- 世界がより良い場所になる
- Versionという視点が得られる
- ロマンスに興味がなくても、得るものがある
- 今からでも遅くない!むしろめちゃくちゃ早い
1. 英語学習に向いている
コリーン・フーヴァーさんの作品は一貫して英語が平易でとても読みやすいです。そんな中でちょこちょことネイティブ独特の表現も混ざっているので、そこは辞書を引く必要がありますが、個人的にはちょうどよい負荷で、楽しみながら英語を学べています。
また、舞台設定も現在のアメリカなので、ファンタジーの様な特殊な設定もなく、現実世界で使える英語をたくさん学べます。
以上の理由で、洋書で楽しく、現実世界での出現頻度が高い英語を学びたい人には、コリーン・フーヴァーさんはおすすめできる作家さんだと思います。
2. 世界がより良い場所になる
コリーン・フーヴァーさんの作品を読んだところ、読者が人間的に成長し、その結果世界がより良い場所になるだろうなという感想を持ちました。
若くして無計画な妊娠をすると将来どうなるか、10代の読者がそのことを作品で疑似体験することで、避妊の意識が高まり、将来起こりうる不幸の多くを未然に防げたり、
自分はDVも飲酒運転もしない、自分は大丈夫と過信している大人が読めば、自分を省みるきっかけになり、予防効果があったり、
ホームレス、アルコール中毒、ドラッグ中毒、毒親、貧困層などのリアルを読むことで、問題の本質は彼らの自己責任ではなく、彼らを生み出してしまい救うこともできない社会の構造であることがわかり、人として優しくなれたり、社会問題への意識が高まったり。
コリーン・フーヴァーさんは一般的にはロマンスというジャンルに分類されがちですが、個人的にはthe Art of Life(生きる術)としたいと思っています(ロマンスがダメというわけではなく)。
大げさじゃなく、コリーン・フーヴァーさんの作品を義務教育期間の必読書にすれば、この世界はより良い場所になると思います。
コリーン・フーヴァーさんの作品がTikTokでバズったということは、おそらく若者を中心に売れてるはずで、そんな若者がこれからの世界を作って行くと思うと、未来に期待できるなと思いました。
3. Versionという視点が得られる
the best/worst version of 人
コリーン・フーヴァーさんはよく「the best/worst version of 人」という表現を使います。
人には良い面から悪い面まで幅があることや、人は生まれ育った環境次第でbestにもworstにもなってしまうことを表しており、
bestからworstの幅の中からどんな自分になるか、他人のどの面を見るか、worst versionになってしまった他人を個人攻撃せず環境のせいだと同情する心を持てるか?
the best version of myselfとまで行かなくても、the better versionでいられるようにしたいですし、相手のthe worst versionだけを見て判断したり、背景をよく知りもせず限られた情報だけでその人のthe worst versionを勝手に作り上げないように注意したいものです。
your version of event
your version of eventは、人それぞれ持っている情報が違うため、同じ事象に対して全く異なる認識を持ってしまうことを簡潔に表現した言葉です。
お互いにコミュニケーションをとり、情報を開示、共有すれば、不要な誤解や争いも避けれるのに、人はつい自分の持っている情報だけで判断しがちですよね。
自分のmy version of eventだけですぐ結論付けず、相手のhis/her version of eventも想像できるように気を付けたいものです。
4. ロマンスに興味がなくても、得るものがある
「誰もが知っていることを小説に書いて、いったい何の意味がある?」
~村上春樹、『風の歌を聴け』~
共感できると気持ちいいけれど新たな学びはない。共感できないと自分との違いから他人を想像するきっかけになって学びがある。理解不能な作品も大歓迎。自分にない発想もっとほしい。という思いで私は読書をしています。
コリーン・フーヴァー作品の主人公(女性)の感性が豊かな所は好きなのですが、理性より感情が勝るタイプで、時々言動の論理が良くわからないこともありました。でも、だからつまらないとか好きじゃないとかではなく、だからこそ興味深く、楽しんで、私は読んでいます。
今売れまくってる作家さんの主人公なので、時代を理解するという意味でも、わからないでシャッターを閉めず、常にオープンな心でいたいと思っています。
また、私はロマンスには興味がなかったのですが、コリーン・フーヴァーさんの作品を読んでみて、なるほど、こういうのも面白いなと思いました。新たな扉を開けれたことは収穫であり、読んでよかったなと思っています。
5. 今からでも遅くない!むしろめちゃくちゃ早い
「他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる。」
~村上春樹、『ノルウェイの森』~
流行に流されて売れてる本を読むのは嫌い!という気持ち、わかります。また、コリーン・フーヴァーさん売れてるらしいし、興味なくはないけど、乗り遅れてしまった感があるし、今更・・・という気持ちもわかります。
でも、ちょっと待ってください。冷静にデータを見てみましょう。
コリーン・フーヴァーさんは今までに約20作で2000万部(1作当たり約100万部)を売上げているそうで、十分凄いのですが、あのハリーポッターは7作で5億部(1作当たり約7000万部)を売上げています。
本が売れる上限にハリーポッターを使ってみると、100万部 / 7000万部 = 1.4%。
つまり、いくらコリーン・フーヴァーさんが売れているといっても、読んでいる人は全体のたったの1.4%。今から読んでも遅くないし、むしろめちゃくちゃ早いくらい。
今から読んでも人と同じ本を読んでいることにはなりませんし、むしろ人が読まない本を読むことで、人と違う考え方ができるようになる可能性があります。
コリーン・フーヴァーさんの作品紹介
まずはこれがおすすめ!代表作3選
It Ends With Us
『It Ends With Us』はコリーン・フーヴァーさん最大のヒット作かつ代表作として、最初の1冊におすすめの作品です。
『It Ends With Us』はTikTokのタグ10億以上!というすさまじいバズり方をしており、この10年で最も成功した作品の1つとしても位置付けられます。作者が誰かにかかわらず、この10年を代表する作品ということで、時代の空気を感じるという意味でも、読んでみてもよい作品だと思います。
『It Ends With Us』はDVという社会問題を扱っており、コリーン・フーヴァーさんの母が父から受けたDVの実話をベースに書かれています。作品の前半ではあんなにラブラブだったのにやがて主人公は彼氏に暴力をふるわれてしまいます。
自分は/彼は大丈夫と思い込もうとしている所は痛々しく読んでいて辛かったです。早く通報して逃げればいいのに…と思うのですが、実際はそう単純じゃないことが上手く書かれていて、とても勉強になりました。
「コリーン・フーヴァー作品の特徴」で取り上げたように、最初はそんなのフィクションだからでしょって読み進めているのですが、途中から、こうなってしまうこともあるかも…とリアリティーを感じさせられるのが、コリーン・フーヴァーさんの上手いところです。
何故あれで暴力になってしまうのか、論理的に理解不能なのですが、その非論理性が怖いなと思いました。いくつか注意すべき点があるように思ったので以下に整理してみました。
- 自分は大丈夫という過信が一番危険:自分もパートナーも誰も彼も全員が人間である以上やってしまう可能性が必ずある。そのことを忘れずに注意する。
- 物事が上手く行っている時ほど要注意:うれしくて調子に乗ってパーティーをしたり、お酒を飲みまくったり、はしゃいでいる時にアクシデントが起こりがち。
- コミットする時に伴うリスクを理解する:パートナー、家族、夢、仕事、なんでも、自分の人生を賭けたものが危険にさらされたり、失われた時に、カッとなったりパニックになって、ついやってしまう。何かにコミットする時は、同時にこういうリスクを背負っていることを理解する。
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Verity
『Verity』はコリーン・フーヴァーさん第二の代表作とされていますが、個人的には一番好きな作品です。ネット上を調査した限り『It Ends With Us』より『Verity』の方が好きという人も少なくない印象です。
『Verity』のジャンルはサイコスリラーに分類され、今までのロマンス作品とは全く異なり、コリーン・フーヴァーさんの才能の幅広さに衝撃を受けました。
一行目から怖面白くて、数日で読了して、最高に楽しめたのですが、感想は、うわぁぁぁ!怖いぃぃぃ!マジかぁぁぁ!としか書けないことをお許しください。というのも、『Verity』は結末に衝撃と感動と学びがあることで感情がグチャグチャになり言葉がまとまらないのと、どこまで内容に触れるかのラインを間違えてしまうとこれから読む人の楽しみが台無しになってしまうからです。
タイトルだけ触れておくと、Verityは作中の女性作家の名前で、意味は「真実であること」「真理」。最後まで読むとタイトルに納得します。
普段怖いのは読まないので、怖いけど面白いという感覚が新鮮で、新たな扉が開けることができ、大満足の読書体験となりました。
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Reminders of Him
『Reminders of Him』は2022年発表の作品で、最も最近の作品群の1つです。本作もAmazon、goodreads、TikTokでセンセーションを巻き起こし、コリーン・フーヴァーさんの勢いが全く衰えていないことを示した大ヒット作です。
『Reminders of Him』のテーマはforgiveness=許し。飲酒運転の事故で彼氏を死なせてしまった主人公と、彼氏の親友の目線で、交互に物語が進みます。普通に考えれば、主人公を許すことができませんよね。でも、小説も娯楽ですから結論は「許す」で固定せざるを得ません。
では、その間をどのように繋げば読者は納得できるか?今をときめくスター作家はどう着地させるのか?私はそこを楽しみに読みました。
自分は飲酒運転なんか絶対にしない、主人公はバカだなぁ、絶対に許せない!って思いますよね。私もそう思いました。でも、「コリーン・フーヴァー作品の特徴」で取り上げたように、読んでいるうちに、自分もやってしまうかも、あの時のあれがああだったらやってしまっていたかも、という気にさせられるところがコリーン・フーヴァーさんの上手いところです。最初は特殊に感じた設定が、細かな伏線回収まで含め、ズバズバとはまっていくところに、作者の実力を感じました。
コリーン・フーヴァー作品をおすすめする理由で取り上げたように、限られた情報で勝手に人のworst versionを作ってしまうことの危険性を教えられ、とても勉強になった作品でもあります。
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ネクストステップ!その他のヒット作5選
Slammed
『Slammed』はコリーン・フーヴァーさんのデビュー作で、伝説の幕開けとなった作品です。本作をアマゾンで自費出版したところから徐々に人気がでて、ついにはニューヨークタイムズ誌のベストセラーリストにランクイン(8位)することとなりました。
『Slammed』を読んでみると、引越し先の向かいにイケメンがいてJK(主人公)が恋に落ちて、でもすぐ彼が学校の先生だとわかり禁断の恋になって、なんだこの設定wwwとなったのですが、読み進めると細かい設定が後に効いていて、コリーン・フーヴァーさんの構成力に驚きました。
『Slammed』の教師と生徒の禁断の恋は、同じく禁断の恋の『ロミオとジュリエット』や、お互いに好きだけどセックスできない『ノルウェイの森』、『日はまた昇る』、『上海ベイビー』のように、いわば小説あるある設定です。
そんな定番フォーマットの上で、コリーン・フーヴァーさんはどう個性を出すのか?彼女には確かな個性があり、好き嫌いは別にして、現代の人気作家の1人になることに納得感が得られた作品です。
タイトルの原形SlamはPoetry Slam(観客の前で詩を詠んで競い合う)の意味や、喧嘩してドアをバタンと閉めたり(スラムダンクと同じ使い方)、困難に打ちのめされたり、詩が心に刺さってガツンとやられるとか、様々な意味を一言にまとめてるのだと思います。
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Ugly Love
『Ugly Love』はコリーン・フーヴァーさんの代表作の1つです(各種レビュー等からトップ2作の『It Ends With Us』と『Verity』、3番手の『Reminders of Him』、その次の4番手くらいの位置づけという印象)。
『Ugly Love』は主人公(女性)目線の現在と、彼氏目線の過去が交互に展開して行きます。現在はセックスだけの関係、過去はセックスできない関係。この対比構造は面白かったです。
過去も現在も、カップル同士でルールを決めるのですが、そのルールがわかりやすくて、なるほど、そのルールに則って恋愛をすると人間はどうなるのかな?と楽しく読めました。
物語の軸となる現在のルールを紹介すると
- 主人公は彼の過去について質問してはいけない。
- 主人公は彼との未来を期待してはいけない。
つまり、2人には過去も未来もなく、現在があるだけ。しかもその現在はセックスだけの関係。なかなか大胆な設定ですが、個人的には極端な設定は好きなので、その点は楽しんで読むことができました。
一方、コリーン・フーヴァーさんに対してよくある否定的意見「トラウマポルノ」についても共感するところがありました。『Ugly Love』は社会問題要素がなく、唐突な事故で悲劇要素が組み込まれます。個人的にはここがひっかかり、「トラウマポルノ」という表現も否定できないなと思いました。
今作はロマンスに振り切った作品で、『It Ends With Us』に代表されるような社会問題要素はありません。その意味で、私個人としては好みではなかったですが、逆に、社会問題要素はいらない、ロマンスが読みたい!という人は楽しめるのだと思います。実際にレビューの評価も高いので、人の好みは本当にそれぞれなのだなと勉強になりました。
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Regretting You
『Regretting You』はツイッターの相互フォロワーさんに、しかも別々の人から偶然にも同じ作品をおすすめしてもらった作品で、実際に読んでみたらとても感動した作品です。
『Regretting You』の主人公は結婚出産後の30代主婦と10代恋愛期の娘の2人体制です。若くして妊娠した時の不安、主婦のルーティンへの疑問、諦めた学歴やキャリアのこと等で、特に母のメンタルが不安定。そして父が死に母子家庭に。今回もコリーン・フーヴァーさんから勉強させてもらいました。
『Regretting You』では酷い浮気があって人間関係が地獄のようになります。いつもどおり自分はそんなことしないと思って読み進めて行くわけですが、いつもどおり途中から自分もやってしまうかもと自分事のように感じさせられてしまいました。ここがコリーン・フーヴァーさんの上手いところです。
自分は大丈夫という過信が一番怖い。その過信のせいで他者へ優しくできなくなったり、一部の情報のみで他者を判断してその人のworst versionを作り上げる。本当に気を付けたいものです。
『Regretting You』ではyour version of eventも実例として学べます。本作は母と娘の視点で交互に章が進むため、母と娘の喧嘩を客観的に見ることができます。母と娘はそれぞれに持っている情報が違い、自分が持っている情報だけだと自分が正しく、相手が間違っている様に見える。これがyour version of event。ちゃんとコミュニケーションして、情報を開示、共有すれば、お互い味方だとわかるのに…人間関係のほとんどの問題はこれに尽きると思いました。
コリーン・フーヴァーさんの作品を読んだ後は、読む前より人に優しくなれる。自分も気をつけようと思える。こういう作家の作品が売れることで、世界は少しずつ優しくなっていく。ということで、コリーン・フーヴァーさんを全面的に支持したいという想いを強くした作品です。
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Heart Bones
『Heart Bones』もツイッターの相互フォロワーさんにおすすめしてもらった作品で、実際に読んでみてとても楽しめたのでここで紹介します。
『Heart Bones』はまず主人公と彼氏役の出会いが最悪でツンツンした関係から始まります。でも主人公は彼のことをイケメンだと思っていてもう既に怪しいんです。私はこのツンがどうなってデレになるのかを楽しみに読みました(笑)
真面目な話もすると『Heart Bones』は主人公がなかなかの貧困層です。ドラッグやアルコールの中毒、窃盗、売春など、好きでやる人はいなくて、貧困という環境がそうさせてしまう。(窃盗と売春については)サバイブするためにやらざるを得ない。
幸運にも普通以上の生活が送れている人は表面的な事実だけで彼等を自己責任、悪人とラベリングする。そして社会のセーフティーネットや司法制度には欠陥があり彼らを救うことができない。
コリーン・フーヴァーさんのような超売れっ子作家が社会の闇に光を当て、読者の認識を変えていくことはとても素晴らしいことだと思いました。
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It Starts With Us
『It Starts With Us』はコリーン・フーヴァーさん最大のヒット作『It Ends With Us』の続編で、現時点(2022年10月)の最新作。『It Ends With Us』を読んだ読者から、主人公達の続編を書いてほしいという声が殺到し、執筆、出版されることになりました。
『It Starts With Us』も引き続きDVを扱うのですが、加害者の手口はmanipulate(操作する)、gaslight(心理的手段を用いて人を正気でない[自分が間違っている]と思い込ませる)とのことで、とても勉強になりました。
主人公の彼役のキャラが良い人過ぎてリアリティーがない点は好みが分かれるかもしれません。DVの加害者を悪者として切り捨てず救いの手を差し伸べるとか私には無理です。でもコリーン・フーヴァーさんは理想と現実の二択で理想を書いたわけで、私はそこを支持したいし、そこから学びたい。
理想と現実は二者択一が絶対でもなく、ただの分岐であり、その道の方針に乗って良いとこを採ればいいだけ。好き嫌いや優劣を決めて排他的な二者択一をすると読書の可能性を狭めてしまうのかなと思いました。
コリーン・フーヴァーさんのように影響力のある作家が、悪人を切り捨てる現実路線を採用したら、影響を受けてそれが正しいと思う読者も中には出てきそうなところも怖いですし、たとえ難しいことでも、理想を示すことで読者に影響を与えられれば、世界がより良い場所になるわけで、理想の採用は希望の種をこの本に植えているのだろうと受け取りました。
個人的には最後の結婚式で読む彼の手紙に感動しました。アメリカでは結婚の半分が離婚になるのが統計らしく、それでも結婚する?自分達が離婚組かも?この統計に対する彼の回答が格好良かったです。
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この記事は以上です。最後までお読みくださりありがとうございました!
この記事をきっかけにコリーン・フーヴァーさんの作品を読んでみようかなと思ってもらえたらうれしいです!
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