アマンダ・ゴーマンさんによる自作詩の朗読『The Hill We Climb われらが登る丘』がベストセラーを更新し続けています。
そのきっかけとなったのは、2021年1月、アメリカのバイデン新大統領の就任式。
弱冠22歳の黒人女性によるポエムリーディングは、どんな世界的セレブによるパフォーマンスよりも衝撃と感動を与え、彼女は一気にスター詩人となりました。
本作品の概要は、こちらの「おすすめオーディブル作品」の記事で紹介しているのですが、
彼女のビジョンがまっすぐに反映されているこの作品は、概要レベルの紹介にとどめておくには、もったいない奥深さがあります。
そこで本記事では、この作品が持つ、米国(米国人)ならではの歴史的、社会的、文化的な背景を、さらに掘り下げて行きたいと思います。
これらの背景を踏まえた上で『The Hill We Climb われらが登る丘』を聞き直すことで、今までと違った発見があったり、メッセージの感じ方も違ってくることと思います。
歴史に残る名スピーチを最大限に味わうため、記事本文の解説が参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
アメリカ在住のCさんに原案をご寄稿いただいた後、ブログ編集者の私がまとめました。私は日本生まれ日本育ちの日本人。外資系歴10年以上、TOEICは対策なしで915(2019年)。英語学習や外資系での経験を、発信・共有しています(詳細プロフィールはこちら▶︎)。
-
失敗しない英語学習法:基礎・独学・オンライン英会話・コーチング・アプリ x TOEIC
英語学習には、何年もの地道な努力が必要で、近道などない。 これは半分正しくて、半分間違っている、というのが私の考えです。 確かに英語学習には何年もの地道な努力が必要ですが、近道はあります。 今までに何 ...
続きを見る
The Hill We Climb われらが登る丘 の概要おさらい
作者と朗読はアマンダ・ゴーマン
- アマンダ・ゴーマンさんは、アメリカの詩人・活動家
- 奴隷を先祖に持つ黒人女性
- アメリカ、カリフォルニア州、ロサンゼルス出身
バイデン大統領の就任式でのポエム・リーディング
- 2021年1月、当時22歳、史上最年少で朗読の役に抜擢
- 力強くリズミカルで歌い上げるような朗読が大きな話題となる
- 就任式の直前に起きた、アメリカ議会襲撃事件を受けて、一気に書き上げたという背景を持つ
アメリカの現状に即したメッセージ
- 分断から調和、団結へ
- 疲労した国の再建
- 民主主義は負けない
The Hill We Climb われらが登る丘 の歴史的・社会的・文化的背景
- 歴史的背景:キング牧師の演説『I have a dream』
- 社会的背景:キャピトルヒル(アメリカ合衆国議会議事堂がある丘、就任式が行われる場所でもある)
- 文化的背景:ミュージカル『ハミルトン』
歴史的背景:キング牧師の演説『I have a dream』
詩とスピーチという違いはあれど、聖書を引用した表現や、言葉を繰り返す朗読によって国の理想を語るさまは、時を越えた名スピーチを彷彿させます。
個人的には鳥肌が立ちました。
それは、リスナーを高揚させる独特な教会説法やゴスペルなど、聖書が身近にあるブラックカルチャーという文化や歴史の継承なのかもしれません。
その流れでいくと、人種的アイディンティティを明確にして、言葉に親近感を持たせるという部分で、オバマ元大統領の演説も思い起こさせます。
社会的背景:キャピトルヒル(アメリカ合衆国議会議事堂がある丘、就任式が行われる場所でもある)
タイトルにある「The Hill」という言葉は、聖書やキング牧師のスピーチでも重要なキーワードとなる「希望の満ちた場所」のことです。
同時に、就任式が行われた”キャピトルヒル”(国議会議事堂がある丘)、つまりアメリカそのものを指し、直前に起こった議事堂襲撃事件への比喩的な意味もあります。
アマンダ・ゴーマンさんは、デモクラシーの根本をくつがえすような暴動に衝撃を受け、すでに半分ほど出来上がっていた作品を、事件の夜に一気に書き直したといいます。
過去から続く人権問題、トランプ政権下での言葉の弱体化、そして怒涛のような「コロナウイルスのパンデミック→BLM(Black Lives Matter:黒人への暴力や差別の撤廃を訴える運動)→議事堂襲撃事件」という不安定な現状まで、
これから越えなければいけない大きな山(課題)は険しいけれど、それでも希望は捨てないという意味で非常に象徴的です。
文化的背景:ミュージカル『ハミルトン』
ミュージカル『ハミルトン』は、史上初、全編をヒップホップ、ラップ、R&Bで仕上げた作品です。
社会現象にもなった本作は、2017年のエミー賞をほぼ総ナメ。キャストがホワイトハウスに招かれ曲を披露するなど、特別な作品となりました。
『ハミルトン』劇中曲『History has it eyes on you』の引用などから、『The Hill We Climb われらが登る丘』が大きな影響を受けていることが伺えます。
公演を観賞したことがある方なら(私のようにサントラを聴き込んでる方も、笑)、ハッとするはずです。
ちなみに、アマンダ・ゴーマンさんは、幼い頃から発音障害があり、劇中の別の楽曲をシャドーイングすることで克服したことを公にしています。
世界に向けて朗読が発表されて以来、この作品は英語圏のさまざまな学校(小学校〜大学)で授業教材として取り上げられているようです。
おすすめオーディブル作品 The Hill We Climb われらが登る丘
『The Hill We Climb われらが登る丘』は活字(本、Kindle)でも発売されていますが、ぜひオーディブル作品として「聞く」ことをおすすめしたい作品です。
なぜなら、本作は単なる朗読ではなく、彼女の言葉遣い、韻の踏み方、抑揚など、まるでラップのようでもあり、声とリズムが織りなす独特の快感が感じなければ、本作を真に味わったことにはならないからです。
ぶっちゃけると、詩の全文はネットのいたるところで公開されており、大統領就任式のスピーチもこのようにYoutubeで観ることができます。
したがって、『The Hill We Climb われらが登る丘』は必ずしもオーディブル作品として所有する必要はないと思います。
しかしながら、スマホのオーディブルアプリに本作があることで、オフラインでも気軽に聞けたり、移動中やその他のながらで聞き流しできたり、オプラ・ウィンフリー本人による序文の朗読がついていることなどを理由に、個人的には持っていて損はなかったと思っています。
すばらしい才能を持った人に、少しでも正当な対価を受け取っていただき、今後さらに優れた作品を発表してほしいという思いもあります。
オーディブル価格は400円(2022年1月時点)でそれほど高くないですし、
オーディブルが大好きで、他にもおすすめしたい作品がたくさんある私としては、
『The Hill We Climb われらが登る丘』をきっかけにオーディブルの魅力を感じていただけたら、
そこからさらに、他の作品もいろいろと楽しんでいただけたら、うれしいなと思っています。
英語ネイティブの容赦ない朗読なので、リスニングは決して簡単ではないかもしれませんが、
作品の朗読は約6分と短く、繰り返し聞きやすいですし、
オーディブルは0.5倍速〜1.0倍速まで0.1倍単位で速度調整ができるので、ぜひチャレンジしてみてください!
この記事は以上です。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
その他のおすすめオーディブル作品はこちら
■英語TOPページ
-
失敗しない英語学習法:基礎・独学・オンライン英会話・コーチング・アプリ x TOEIC
英語学習には、何年もの地道な努力が必要で、近道などない。 これは半分正しくて、半分間違っている、というのが私の考えです。 確かに英語学習には何年もの地道な努力が必要ですが、近道はあります。 今までに何 ...
続きを見る
■転職TOPページ
-
【脱・失敗】転職・退職の注意点と解決方法
5回転職してわかった10のこと 人生は転職で本当に変わる。 転職先は意外な程たくさんある。 ホワイト企業は普通に存在する。 ダメな会社は優秀な人から辞めて行く。 転職に罪悪感は不要。社員に辞められる会 ...
続きを見る